八ヶ岳 編笠山/権現岳登山 ”遠い飲み屋”の青年小屋 一泊二日テント泊

名残惜しい絶景
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編笠山/権現岳登山活動記録

山行日2025年7月26日(土)~7月27(日)
標高編笠山2524m 権現岳2715m
登山コース観音平第一駐車場〜青年小屋〜編笠山~青年小屋~権現岳~青年小屋~観音平第一駐車場 
標準コースタイム 8時間48分
コースタイム実績10時間08分(休憩込)
距離12.6km
上り/下り(累計)1410m/1410m
グレーティング4C (長野県のグレーティング表を見る)
駐車場観音平第一駐車場(無料/40台)
観音平第二駐車場(無料/30台)

山行記録

昨年の夏の週末は、何度も「もう勘弁してくれ~」と思うほど天気が悪く、土壇場で登山をリスケされた方も多かったのではないでしょうか。
かく言う私もご多分に漏れず、天気図とにらめっこしながら指をくわえて週末を過ごした一人です。

結局、昨夏は高山に登ることができず、初秋の会津駒ケ岳を楽しむにとどまりましたが、やはり3000m級の山に登れなかった鬱憤を晴らすべく、今年こそはと八ヶ岳の編笠山と権現岳に登ってきました!

権現岳の標高は2715mで、八ヶ岳連峰の中では赤岳・横岳に次ぐ3番目に高いピークです。

編笠山も含めて眺望の良い山として評判の山に、いつもの夏のチーム登山メンバーで、”遠い飲み屋”として知られる青年小屋を拠点にテント泊を満喫してきました!!

【青年小屋、テント場情報】
・テント場の料金は1,500円/人(トイレ代込み)でした。
・水はテント場から徒歩5分の所に湧き水の”乙女の水”があります。
・テント場は広く平らで非常に好立地です。
・ビール(キリンラガー、一番搾り、サッポロ黒ラベル) 350mlが500円と良心的な値段です。
・屋外トイレは臭いますので、小屋のトイレを使うことをお勧めします。
・スタッフの対応は親切でした。

1日目 観音平~編笠山~青年小屋

観音平第一駐車場

AM8:45
埼玉から車でアクセスし、小淵沢ICから約15分で観音平第一駐車場に到着。
すでに満車でしたが、手前の道路には十分な路上駐車スペースがあり、スムーズに準備を整えることができました。

駐車場には簡易トイレもありますが、快適さを求めるなら、麓の「道の駅こぶちさわ」で事前に済ませておくと、より気持ちよく山行をスタートできると思います。

登山届提出

登山届を駐車場脇のポストに提出し、登山スタート。
初日は青年小屋でチェックイン後、テントを設営してから編笠山へ向かいます。

時間に余裕があれば西岳にも足を延ばして、静かな八ヶ岳の稜線をゆったりと味わう贅沢なプランでの入山です。

八ヶ岳の緑

登山道は、八ヶ岳らしさを感じさせる苔むした緑の森が広がり、静けさと清涼感に包まれながら歩きます。

八ヶ岳の登山道

八ヶ岳を訪れるのは、2018年に硫黄岳と天狗岳を登って以来、実に7年ぶり。
オーレン小屋の名物・桜鍋(馬肉のすき焼き)の美味しさが蘇ってきました。
風景だけでなく味の記憶に結びつくところがまた登山のいいところです。

編笠山、権現岳登山道

登山道は八ヶ岳の主峰の一つ権現岳に続くとあって、歩きやすく、また木々の影が日差しを遮ってくれるため暑さもそれほど感じませんでした。
青年小屋までずっとこんな感じの道が続きます。

オニヤンマ君

今回の山行では、編笠山名物とも言えるアブ対策として、前日に100円ショップで購入した「オニヤンマ君」を携行。

毎年7月には青年小屋から「アブ警報」が発令されるほどの多さですが、トンボの出現とともに徐々に収束するのが通例。

今年はまだ警報継続中だったので、登山道でもアブが飛び交っていましたが、日本最大の肉食昆虫のオニヤンマ君の威力でしょうか、メンバー全員襲われることはありませんでした。

遠い飲み屋到着

PM0:25
スタートから約3時間半、山の“遠い飲み屋”こと青年小屋に到着しました。
うっかり“居酒屋”と呼ぶと小屋の女将に叱られてしまうので、呼び方にはご注意ください。

受付を済ませた後、3名はテント場で設営。1名は小屋泊まりのため、山荘内で寝床を確認しつつ、編笠山への準備を整えました。

青年小屋テント場

青年小屋のテント場は、平坦で広々としており、立地も抜群でした。
ペグダウンがしやすく、ロープを張るための石も豊富に揃っていて、設営はとてもスムーズに完了。

山の静けさと心地よい風を感じる、快適な自然条件が整った理想的なテント場でした。

青年小屋野外トイレ

屋外トイレは、なかなかパンチの効いた香りで、過去に丹沢で経験した“伝説級”のトイレを思い出すほどのレベルでした。
小なら30秒程で済むので息を止めてなんとか凌げますが、大は正直厳しいかもしれません。

ですので、今後青年小屋に行かれる方には、屋内トイレの利用をおすすめします。
テント泊でもスタッフに声をかければ利用できますので、是非屋内のトイレを利用ください。
(特に一番奥にある結構キレイ目のトイレが良いです☆)

乙女の水

テント場から5分ほどの場所にある「乙女の水」は、水不足による枯渇が心配でしたが、勢いよく湧き出る清らかな水は、まろやかで口当たりも良く、自然の恵みを感じられる素晴らしい水場でした。

やはりテン場の水は雨水よりも湧き水の方が、味も良く量も豊富で嬉しいですね。
ただ、少し下った所で顔や体を洗っているおじさんたちの姿には、ちょっと引いてしまいましたが…
それもまた山ならではの光景?ですね。

青年小屋ラーメン

テントを張ったら編笠山へ登る前にカレーライスで腹ごしらえと思ったら、まさかの品切れ…
代わりにラーメンでエネルギーを補給!ですが、麺はインスタントで値段は1000円。ちょっと高いかなと思いますが、チャーシュー(2枚)だけは手作りのようで、800円くらいの価値はありました。
西穂山荘のチャーシューよりも美味しかったと思います。

編笠山登山

PM1:55
腹ごしらえを済ませたら、いよいよ編笠山へ。
ゴツゴツした大きな岩の上を岩の隙間の穴に落ちないよう慎重に登っていきます。

荷物は山荘とテント場にデポしてきたので、身軽なスタイルで快適に歩けました。

編笠山登山道の岩

岩の上をぴょんぴょん飛び移るように登っていきます。

編笠山からの権現岳

高度が上がったところで振り返ると、青年小屋を挟んだ向こう側に明日登る権現岳(右端)が見えてきました。
美しい緑に囲まれて静かに佇む存在感が印象的でした。

編笠山山頂

PM2:20
青年小屋から30分程で無事に本日の目的編笠山に登頂です。

編笠山からの景色

山頂からの眺望は素晴らしく、眼下には山梨方面の街並みが広がります。
ただ、期待していた富士山はあいにく雲に隠れてしまい、姿を拝むことができず残念でした。

編笠山からの景色(長野)

こちらは長野方面。遠くに諏訪湖を望む穏やかな風景が広がり、登ってきた疲れも癒されていきます。

遠い飲み屋の提灯

青年小屋に戻ると”遠い飲み屋”の提灯に灯がともり、夕暮れの中で情緒的な雰囲気を醸し出していました。
この山でしか味わえない山と人の温もりが交わるような、独特な雰囲気です。

遠い飲み屋のお酒

“遠い飲み屋”の充実した酒のラインナップ。
ビールはキリンラガーと一番搾り、黒ラベルと3種類、日本酒は名酒が6種類も♪田酒なんて山で飲めるのはここだけではないでしょうか🍶
山梨だけあってワインもフルボトルで置いてあり、焼酎やチューハイも並ぶ徹底ぶりはさすがの一言でした。

この光景を見て「西岳はもういいや」ってなってしまい、この日の山行は強制終了。
編笠山の登頂を祝ってメンバーと乾杯しました🍺🍺

さいぼくウインナー

数々の金賞を総なめにする我らが埼玉の名物”サイボク”のあらびきウインナーを焼いて、香ばしい香りとジューシーな旨みを楽しみながら、山ビールを一気に胃に流し込みます!
この瞬間が至福のひととき✨

青年小屋からの富士山

夕暮れ近くになると、雲の流れも落ち着いて富士山が顔を出してくれました!
富士山を眺められる好立地が青年小屋の素晴らしいところです✨

青年小屋の夕暮れ

眠気と闘いながらお酒をたくさん飲んで、気持ち良くなったままテントへ!
明日は晴天に恵まれて、権現岳から富士山が見られますようにと祈りながら20時頃に就寝しました。

2日目 青年小屋~権現岳~観音平

編笠山の朝

AM5:40
目が覚めてテントを開けると、編笠山は山頂部に朝日が当たり、正に編笠を被っているような姿を見せてくれました。
静かで平坦な好立地のテント場は快適のはずでしたが、モンベルのエアマットに穴が開いて空気が漏れて、ほぼ地べたでの就寝となりあまり眠れない夜に。
後日モンベルに修理を依頼するも、生地が劣化していて修理できないと言われました…

エアマットは約5年前に13,000円程で購入して使用回数はわずか5回程。一晩あたりに換算すると2600円…
頻繁にテント泊をされる方には良いアイテムかもしれませんが、年に1回程度の使用頻度の自分にとっては割高でした。
次に買うマットは耐久性を重視して、フォームパッドにしようと思います。とはいえエアパッドも収納性と寝心地が素晴らしいのは間違いないのですが…。

山道具選びは、使い方とのバランスが大切だと改めて感じました。

青年小屋の朝食

こちらは青年小屋の朝ごはん。
小屋に泊まったメンバーが撮影してくれました!

青年小屋名物の手作りシューマイは、テレビでも紹介されるほど評判の一品です。

山小屋のご主人が「登山者のエネルギーになれば」との想いを込めて作っているだけあって、その味わいは格別のようです。
実は私もこのシューマイが食べたくて、テント泊か小屋泊か最後まで悩みましたが、結局貧乏に負けてテント泊にしました…いつか金銭的余裕ができたら、この絶品シューマイを味わうために小屋泊でまたここに来たいと思います。

青年小屋吞兵衛の部屋

”遠い飲み屋”の呑み処。
吞兵衛登山者が夜更かししながらダラダラ飲むところです。昨夜も吞兵衛たちが集結して山話に花を咲かせていました。
山好き同士が自然と打ち解ける特別な場所。良い雰囲気ですね🍶✨

青年小屋寝室

こちらはお部屋の様子。
破れた障子を日本酒のラベルで補修するという荒技が炸裂しています…
“飲み屋魂”が宿った味わい深い空間に仕上がっています。

権現岳登山道

AM6:30
権現岳に向けて2日目の登山スタートです。
道幅は少し狭いですが、歩きやすい道が続きます。

権現岳からの編笠山、南アルプス

振り返ると昨日登った編笠山が目の前にどっしりとそびえて、その向こうには雄大な南アルプスの山々が広がります!
素晴らしい景色にテンション爆上がりしました!!

権現岳からの富士山

更に左手には富士山と雲海!
ビューティフル!!✨
澄み渡る空も高くて絶好の登山日和です!
この景色に出会えるから山は止められないんですよね。

権現岳からの北アルプス

右手には、北アルプスの穂高連峰から大キレット、そして槍ヶ岳まで一望!
まさに絶景のオンパレードで、思わず「たまんねー!」って叫びたくなるほどの美しさでした。
登山はロマンですね、ロ・マ・ン!心が震える瞬間です。

権現岳鎖場

AM7:15
西ギボシと東ギボシを抜ける鎖場は、見た目は少しスリリングですが、難易度は高くはありません。
鎖を握らなくても進めるところもありましたし、足場もしっかりしていて安心感があります。

鎖場入門編といった感じで、ほどよい緊張感を味わえる、一味違うエッセンスが加わるエリアです。

権現岳鎖場②

画像での見ると傾斜があって緊張感を感じる岩場ですが、実際に登ってみるとスイスイ登れました。

権現岳からの中央アルプス

西ギボシ付近からは編笠山と遠くに中央アルプス、さらにその奥の御嶽山まで一望できる展望が素晴らしかったです。

権現岳最後の鎖場

AM7:30
東ギボシの手前にある最後の鎖場は、その前の鎖場に比べて少し難易度が上がりましたが、慎重に進めば問題なくクリアできるレベルで、恐怖心は感じるほどではなく、軽快にクリアできました。

権現小屋

AM7:45
西ギボシと東ギボシの鎖場を越えると権現小屋が見えてきますが、こちらは長らく休業中のようです。
赤岳方面への縦走ルート上に位置していますので、まだまだ需要はありそうですが、人手不足に加えて建物も傾いており、なかなか営業再開は難しそうです。

東ギボシ

振り返ると、綺麗な水色の空と雲海をバックに東ギボシが堂々とした山容を見せてくれます。
鋭い三角形のシルエットが、まさに“カッコイイ”という言葉がぴったりの姿。

権現岳からの赤岳

左手には八ヶ岳最高峰の赤岳がドーンと現れました!
稜線はなかなか歩き応えがありそうです。

権現岳山頂手間前

AM7:50
赤岳との分岐点、権現岳山頂手前で富士山と南アルプスをバックに仲間をパチリ☆
壮大な景色に包まれての満面の笑みがこの山の素晴らしさを表現してますね。

権現岳山頂

AM8:00
そしてついに権現岳登頂です!
巨大な岩稜の先端が山頂で、象徴の“権現の剣”が空へ向かって突き立っています。
無事に登りきれたこと、最高の好天に恵まれたことに、山の神様に感謝感謝です!

権現岳からの景色

山から絶景という最高のご褒美をもらえました。
目の前の南アルプスの絶景。その壮大な眺めに心を奪われました。

権現岳からの富士山

南アルプスから富士山への大展望。
本当に最高の景色です!!

八ヶ岳独り占め

山頂すぐ隣にある岩に登れば、ほぼ360°の大パノラマを一人占め!
息を飲むような絶景を満喫し、「やっぱり山は最高!!」と、貧乏を忘れるほどの至福のひとときでした✨
岩場は見た目ほど危険ではなかったです。

名残惜しい絶景

しばらく絶景を楽しんだら、名残惜しい気持ちを抑えて下山開始。

振り返ると見えた最後の権現岳と富士山の絶景を目に焼きつけました。
壮大な名峰のコラボレーションは山行の締めくくりにふさわしい、心に残る風景でした。

子供たちの頑張り

下山途中、鎖場を登ってきた小学生親子ツアーの登山客とすれ違ったところで、5年生くらいの女の子が一人だけ鎖場が怖くて登頂を断念していました。

その子は自分だけ登れなかったことへの悔しさと、付き添いのお母さんへの申し訳なさもあってか大号泣して動けず。
お母さんに抱きしめられている姿を見て、こっちも目頭が熱くなりました。

泣いている子とのすれ違いざまに「ナイスチャレンジだよ!」「ここまで来るだけでも凄いんだよ!」と声をかけて下山。
山を嫌いにならないで、大きくなったらまた挑戦して欲しいです。
あの時、声を掛けてきた”知らないおじさん”が見た景色を、彼女が大きくなったら自分の足で見て欲しいと思いました。

まとめ

編笠山・権現岳登山は、まさに絶景の連続で、南アルプス、富士山、そして北アルプスの名峰までを一望できる贅沢な展望に何度も心が震えました。

権現岳は八ヶ岳連峰の中でも3番目に高く、絶景が期待できるというステータスがある割には登山者は少なめで穴場のエリアですが、快適なテント場、乙女の水の美味しさ、登山道の歩きやすさと総合的な難易度の低さ、編笠山と権現岳山頂からの景色の良さ、”遠い飲み屋”のお酒のラインナップなど、ゆっくりと登山を楽しめる魅力がたくさん詰まった贅沢なルートだと思いました!

最近ではSNSでは「編笠山はもっと評価されていい山」という声を耳にしますが、それはその通りでありながら、権現岳こそもっと評価されるべき山だと思います。

初登場のオニヤンマ君も大活躍?でしたし、好天にも恵まれて、山からもらった”絶景”という最高のご褒美に、登山のロマンを感じた素晴らしい山旅でした。