
登山活動記録
山行記録
ようやく暑さも収まり、いよいよ本格的な秋登山の季節に入った10月の中旬、山梨県との県境にある埼玉百名山の三国山と十文字山に行ってきました。
埼玉、群馬、長野の三国を跨ぐことからその名前が付いた三国山。
周辺はかつて林業や鉱業が盛んで、三国峠は秩父の木材や鉱山資源を信州に運ぶために使われていましたが、昭和中期には資源の枯渇などで衰退し、現在はほぼ使われおらず、峠道は2019年の台風の影響から埼玉側で通行止めになっており、長野側からの交通が主要ルートとなっています。
また、甲武信ヶ岳と稜線続きにある十文字山では、十文字小屋の宗村みち子さんとお会いして、貴重な現在の登山者について話も聞くことができました。
三国山 三国峠コース
最初の目的地は三国峠。埼玉側は通行止めのため、埼玉から上信越道をグルっと回って長野県川上村側から入りました。
甲武信ヶ岳の登山口として人気の毛木平駐車場もそうですが、3時間の運転時間+高速代という時間とコストがかかるのがネックな山です…

三国峠に続く林道は荒れていて、悪路と落石に注意しながら慎重に運転。

AM7:10
秩父多摩甲斐国立公園入口にある三国山登山口に到着。
車は空いているスペースに駐車して、登山の準備を整えます。

気温は9℃と秋の朝らしい寒さですが、さすがの奥秩父の峠は、奥武蔵山域の正丸峠や顔振峠とは違って山々がダイナミックに並び、その向こうには八ヶ岳の絶景も見ることができました。

三国峠はすっかり秋の雰囲気が漂っていました。

登山口は少しわかりにくいですが、トイレの右脇から入山します。

美しいブナ林の稜線を進みます。
視界は遠くまできくので、茂みからいきなり熊が現れるということはなさそうでした。
それでも動物がいる雰囲気はありましたので、熊鈴を鳴らしながら注意して進むと、画像はありませんが、リスとシカに遭遇。

往復1.3kmのショートコースですが、難所が2か所あります。
1箇所目の岩を登るロープ場です。
登山経験者であれば難しくはありませんが、滑落すると重傷レベルですので、特に濡れている場合は慎重に登っていただきたいです。

2箇所目は岩登りになります。
こちらも慎重に登ればそこまで難易度は感じませんでした。
手の平に伝わる岩肌の冷たさも登山ならでは。

紅葉が色づき始めた木々の向こうに、日本百名山の両神山が見えました。
埼玉ハイカーにとっては山心がくすぐられる景色です。

AM7:37
埼玉百名山の三国山に登頂です!
標識はあまり見ないタイプの黒を基調としたシックなデザイン。

でもよく見ると、ベアクローの跡が…

手書きの標識もありましたが、標高が6mも違う…?

山頂は広くはありませんが、奥秩父の山らしく静かで落ち着いた雰囲気でした。
この山頂を通過して登山道を先に進むと群馬県側に入り、日航機墜落事故があった御巣鷹山へと繋がります。

山頂からは、フリークライミングのメッカとして知られる小川山が、堂々たる姿を見せてくれていました。

更に右手には八ヶ岳を綺麗に見ることができます。山頂からの景色はあまり期待していなかったので、嬉しいサプライズした。
帰りは熊が出ないかドキドキしながら急いで下山し、十文字山の登山口の毛木平駐車場に向かいました。
十文字山 毛木平コース
AM8:30
三国峠から移動して本日2つ目のターゲットである十文字山の登山口、毛木平駐車場に到着しました。
移動時間は40分と地味に長かったです。

AM8:35
毛木平登山口をスタートしました。
相変わらずトイレも綺麗に管理されて、素晴らしい駐車場です。

甲武信ヶ岳の主要コースとして多くのハイカーに歩かれている登山道は、広く優雅な登山道。
抑えられないわくわく感に歩みが弾みます。

AM8:43
登山口から10分ほどで、甲武信ヶ岳方面と十文字山方面の分岐に到着。
十文字山方面の左手に進みます。

環境省は設置した立派な「千曲川源流狭霧橋」を渡ります。
「挟霧」は”さぎり”と読むようで、一般的には「狭霧」と書き、「霧がかかっている様子」を指すとのこと。古語や俳句で使われ、「狭い範囲の霧」や、「季節の変わり目の霧」という意味で使われているそうです。

さっそく紅に色づいたカエデが、秋の到来を実感させてくれました🍁

そして高度が上がってくると、シラビソやコメツガがブナと混植し、石には苔を纏った奥秩父らしい美しい登山道に様変わりします。

水場を迎えると十文字峠まであと1時間です。

「あと30分、もうひと息」の優しい言葉にちょっと感動。

水場から始まる急登エリアを抜けると、あとは少し長いトラバースで、平行移動でスイスイ進みました。

AM9:40
十文字峠に到着です。
右手に十文字小屋がありますが、先に十文字山に登頂するため、左手に進みます。

こちらも苔むした登山道。標高は2000m付近となり、八ヶ岳のような山深い雰囲気が格別です。

AM9:50
登山口から約1時間10分で十文字山登頂です!
案内板の支柱が山頂標識で、展望はありませんでした。
ここから尾根伝いに今朝登ってきた三国山へと繋がっていますが、マイナーなエリアのため、静かな山歩きが楽しめそうです。

山頂には三角点があり、少しだけスペースがありましたが、近くに十文字小屋がありますので、ここで長い休憩を取る人はあまりいないかなと思います。

十文字峠のに戻ると十文字小屋の裏手に峠の標識を発見。

十文字小屋は素敵な造りだったので、中に入ろうとしましたが、残念ながらこの日は、歩荷で小屋は留守。駐在者は一人もいませんでした。

トイレは外観が綺麗ですが、使用料は200円とやや高め?なので、溜めて溜めて「もう我慢できないー」っていうくらいギリギリで使いたいですね。

看板のきのこうどんとおしるこがとっても美味しそう…
きのこうどん(1000円)がめちゃくちゃ食べたくなりましたが、管理人がいないので次回までの我慢となりました。

そして今日最後のの目的地、絶景が見られる「かもしか展望台」へ向かいます。
十文字小屋から500mです。

途中、道を間違えた先に花見台があり、シャクナゲの群生を見下ろすように造られていました。
6月には満開のシャクナゲを楽しむことができるようです。

しかし、この辺りはシャクナゲの群生が凄かったです!
正に、この辺りの山域を舞台にした小説「春を背負って」の世界感そのものといった感じです。
6月の見られる満開のシャクナゲは、一見の価値あり、いや、必見の価値ありと感じる規模で、いつか絶対に見に来たいと思いました。

AM10:15
かもしか展望台に到着。
奥秩父の山並みをダイナミックに望むことができ、遠くには八ヶ岳の絶景を楽しむことができました。
静かで美しく、ずっと見ていられる景色。
風が舞い上がって、木の葉が揺れる音だけの世界です。

左手には埼玉県の最高峰・三宝山がのっぺりとした佇まいで、奥秩父の重厚感を感じさせてくれました。
人生のご褒美のような素晴らしい絶景を楽しめたかもしか展望台。
奥秩父の魅力を十分に満喫して下山を開始しました!

十文字峠に戻ると、十文字小屋の裏手には紅色のナナカマドと黄色いブナと飛行機雲のコラボも見られました。

下山途中には歩荷で上がってくる十文字小屋の管理人、宗村みち子さんとお会いして15分ほど談笑。
埼玉百名山の話題で盛り上がるも、昨今の登山者のマナーの悪さにお困りのようでした…
①勝手に道を作るバリ登山者と、それをSNSで見て真似する登山者。更にそのルートを認定する山レコとYAMAPには登山者の危険回避のため、都度ルート解除を依頼しているとか。山レコは対応が早くてYAMAPは少し遅いそうです。
②躓いて怪我をしたのを「山小屋の整備が悪いから怪我した」と山小屋側のせいにする登山者。
③歩荷道を勝手に歩いて注意すると、逆ギレする登山者。
などなど、山小屋側のリアルなお話が聞けました。
するとタイミングよく(悪く?)、バラバラにはぐれて登るパーティーが我々の前を通ると、宗村さんから「なーんでバラバラで登るの!離れちゃダメでしょ!!」とお叱りの一言。
それでも宗村さんのお話からは「安全に山を楽しんでほしい」という思いが感じられ、山と登山者への強い愛情を感じました。
「またきのこうどん食べに来ます~」と言って、宗村さんと笑顔で別れて下山。

中腹辺りでは、落葉したカエデが、まだら模様を描いて秋の登山道を演出してくれていました。

そして最後はご褒美の紅葉。
陽が高まり、黄金色に輝いた木々を楽しみながら下山。
紅葉の本番はまだ先でしたが、思いがけない自然の美しさに心癒されて、気持ちよく山歩きを楽しめました。
久しぶりに登った奥秩父山塊は、やっぱり素晴らしい!と改めて実感。
遠くてなかなか足を運べませんが、またこの地を訪れる日を楽しみに、心地よい気分で下山しました。
まとめ
三国山は往復30分ほどのショートコースながら、八ヶ岳連峰や埼玉側の両神山を望む好展望の稜線歩きを楽しめました。
日航機事故の御巣鷹山へと続く重要な登山道でもあり、その歴史的背景からも三国山の存在価値の高さを改めて感じました。
十文字山は、甲武信ヶ岳から繋がる稜線上の主峰のひとつですが、やや足を向けにくい位置にあることから、地味な印象の山でしたが、奥秩父の美しい樹林帯を静かに気持ち良く歩けますし、かもしか展望台からの絶景も素晴らしく、想像以上に良い山でした。
十文字小屋という拠点もあり、もっと評価されてもよい山だと思いました。
十文字小屋管理人の宗村さんは、それなりのご高齢ながら、現役で荷物を担ぎ上げる姿にただただ尊敬の一言で、これからも長く山に携わっていただきたいという思いと、この方が作る十文字小屋のきのこうどんは絶対に美味しいと確信したので、また今度食べに行きたいと思います!
三国山の紹介記事はこちらです👇
十文字山の紹介記事はこちらです👇


